恐ろしやオトギリソウ

先にも書いた【高原と高山の植物②】に掲載されているオトギリソウ属(Hypericum)の数は、なんと7種にも及ぶ。なんか全然わかんねー。区別つかないよ。(ーー;) それは実物を見ていないからだ。うちにあるのはたった一つ、これだよ。私はサワオトギリと思っている。

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軽井沢の保養所の庭にあったもので、去年タネを蒔いたらごっそり発芽した。写真では大きく見える花も、実物は1センチほどの大きさで、葉や萼、花びらには腺点が目立つ。この腺点について、既出の図鑑では黒点と明点とに分けて記述している。写真の軽井沢産のものに近いと思われるオトギリソウ属を数種、【高原と高山の植物②】から忘れないように書き出す。

シナノオトギリ Hypericum kamtschaticum var. senanense
  学名の意味: senanense=信濃産の
  ポイント: 葉のふちに黒点、葉面に明点がある(イワオトギリに比べて多い?)。中部地方産。
亜高山から高山の林のふちや草地に生える。高さ10-30センチ。葉は長さ1.2-4センチ、幅4-15ミリ。花は径1.5-2センチ、やや数が多い。本州(中部地方)、固有。花は7-8月。葉面に黒点が多く、明点が少し混じるものはイワオトギリ(Hypericum kamtschaticum var. hondoensis)といい、東北から中部地方に分布している。花にも黒点があるのがシナノオトギリで、ないのがイワオトギリであり、イワオトギリは高山に生えるとも言われている。【高原と高山の植物②】より引用。

コオトギリ Hypericum hakonense
  学名の意味: hakonense=箱根産の
  ポイント: 葉は普通、明点だけある。関東、東海地方産。
低山の草地に生える。高さ10-30センチ。葉は長さ1-3センチ、幅2-5ミリ。基部は細くなる。花は径1.5-2センチ。花弁は長さ6-7ミリ。雄ずいは3束。花柱は3本。本州(関東、東海地方)、固有。花は8-9月。【高原と高山の植物②】より引用。

アカテンオトギリ Hypericum hakonense var. rubropunctatum
  学名の意味: rubropunctatum=赤点のある
  ポイント: 葉の明点は赤点を帯びる。中部地方産。
低山から亜高山の草地に生える。高さ10-30センチ。コオトギリに似ているが、葉の赤点が目立つ。本州(美ヶ原、鉢伏山)、固有。花は8-9月。【高原と高山の植物②】より引用。

サワオトギリソウ(サワオトギリ) Hypericum pseudopetiolatum
  学名の意味: pseudo=偽の、信じ難い。また多くは、それに続く種小名を持った種に似たの意。petiolatus=葉柄のある。【要するに、偽の葉柄のある、だろうか?】
北海道西、南部、本州、四国、九州に分布。山中の湿地や渓畔に生える多年草。茎は草丈10-40センチ。円柱状。基部は斜上。時に分枝する。葉は長さ2-4センチ。幅4-12ミリ。楕円形または倒卵状楕円形。基部は細く柄状。先端は鈍頭。薄く軟質。透明点を密布。辺縁に黒点。花期6-8月。花径は10ミリくらい。萼片は狭長楕円形、鈍頭。3.5-5.5ミリ。辺縁に突出する黒点。花弁は4-6ミリ。花柱は長さ1-2ミリ。さく果は卵型か卵状楕円形。長さ5ミリくらい。種子に細網紋。【以上は原色高山植物大図鑑より】

オトギリソウ属の茎や葉、花には「腺体」がある。赤い色素を含み黒く見えるものを「黒点」や「黒線」といって、赤の色素を含まないものを「明点」や「明線」というそう。

名前の由来が、仲の良い兄弟の兄がこのオトギリソウから作る秘伝の妙薬の秘密を漏らした弟を、斬り殺したという伝説から来ているんだってさ。そのときに弟の血がこの植物に飛び散り、その跡が黒い斑点として残ったって。。。。ね、怖いでしょ。(~_~;)

そしてこのオトギリソウ属は日本産だけで50種もあり、素人には同定は困難だって。^_^; 上の図鑑の記述からするに私の採取したオトギリソウは、シナノオトギリに一番近いような気がする。採取地も軽井沢(信濃)だしね。でもサワオトギリにもそっくり。ただ写真を良く見ると、葉の先端は鈍頭ではないので、サワオトギリじゃないのかもしれないと思えてきた。困ったね、山草会にサワオトギリという名前でタネを提供しちゃったのに。。。(^^ゞ

2005年9月11日追記
【フィールドベスト図鑑高山植物】監修:大場達之、写真:永田芳男より引用。
シナノオトギリは、雪田周辺に多い。葉は楕円形で短くてやや狭く、葉面に明点、縁に黒点があり対生。花は直径1.5-2センチで多数。萼片の黒点は内側に多く、蕾は赤い。

こちらの図鑑の説明では、我が家のオトギリソウは葉面が黒点ばかりで蕾も赤くない、萼片の黒点は外側にはっきり現れるので、シナノオトギリではないということになる。