前日の夜10時ごろホテルにチェックインして、この日はフラワーウォッチングの1日目。ヴァチカジェツに行く。途中で植物ガイドのアンナさんと、助っ人のナスチャさん(お弁当のお世話とフラワーウォッチングの時はアンナさんと列の先頭に)とウラジミールさん(列の最後尾)をピックアップ。
大サービスでネームテキスト入り、解像度も下げないでお披露目よ。おとなし目のお二人でした。というか、カムチャッカでは飛行機のCAさんは別として地方の人々の素朴な人柄を感じた。
チシマフウロは丈40センチ以内、と書いてあったがカムチャッカの道路端では60センチかそれ以上くらいだった。そのほかのどこでも見かけた淡青紫のゲラニウムは変異に富んでいて、果たして同じものか同定できないが、そんなことはどうでもいいのかも。きれいに咲いていたよ。
花の形状、花色、丈、葉の切れ込み具合、葉の大きさなど、同地域でもいろいろなのがあった。同地域にあるものは同じ種だと思うのが一般的だが、数メートル離れた場所で花色が凄く濃いのや、花びらが明らかに細めで隙間が空いてるのと、花びらが丸っこくて隙間がないもの、葉っぱも大きくて切れ込み方が深かったり浅かったりとさまざま。素人泣かせの個体変異というものか。
私が現地でみた丸っこい花で花弁に隙間のない個体とそっくりな花がBotany.czというチェコの公的機関のサイトでアップされていた。そこではGeranium erianthumとして画像がのっており、異名として以下のように書かれていた。このサイトは愛好家も参加しているという。植物学者の検証がされている上での画像投稿か分からない。
Syn.: Geranium elatum (Maxim.) R. Kunth, nom. illeg.,
Geranium erianthum f. albiflora Kom.,
Geranium pratense var. erianthum (DC.) B. Boivin
このシノニムで合点が行った。葉っぱがプラテンセにそっくりなのもたまに見かけた。
植物学ラテン語辞典によればerianthus, -a, -um =軟毛ある花の、という意味で、pratensis, -is, -e =草原の、草原に育つという意味だった。
下:チシマフウロ
Geranium erianthum ゲラニウム エリアンツム
下:マイヅルソウ マイヅルソウ属
Maianthemum dilatatum マイアンテムム ディラタツム
別の場所で撮ったマイヅルソウだが、花茎が上の株では緑色だが、下の株では赤黒い。
ヒメマイヅルソウには葉裏に毛があり、マイヅルソウには葉裏に毛が無いそう。ヴァチカジェツには下草としてどこにでも生えていたが、葉裏まで確認しなかった。どっちか不明。ヒメマイヅルソウは葉の幅が細く、葉裏、茎、花序に突起毛があり、葉の縁に微細な鋸歯が見られる、と書いてあるサイト様もあり。
下:マルバシモツケ バラ科シモツケ属の落葉低木
Spiraea betulifolia スピラエア ベツリフォリア
下:ホソバノキソチドリ ラン科ツレサギソウ属
Platanthera tipuloides プラタンテラ ティプロイデス
下:ヒメシャクナゲ ツツジ科ヒメシャクナゲ属 別名ニッコウシャクナゲ
Andromeda polifolia アンドロメダ ポリフォリア
アンドロメダと言ったら星雲(銀河)でしょ?と思ったけど、植物学ラテン語辞典で調べたらギリシャ神話の美女の名前だって。poly-が多いという意味で、folium, -iが葉なので「葉が多い」という意味だった。
15センチもない丈でツガザクラの仲間かと思ったが、同じような植物はグーグルでも見つけられなかった。キーワードをシャクナゲ似のツガザクラで検索したら同じような植物の写真がヒット、これだと思った。
下:上のヒメシャクナゲと同じか分からない。凄く似ていて非かも。これも白花種だったりして。
下:エゾゴゼンタチバナ
Cornus suecica コルヌス スエキカ
下:クロマメノキ 別名アサマブドウ ツツジ科スノキ属
Vaccinium uliginosum バッキニウム ウリギノスム
種小名のuliginosumは「湿地」に生える、を意味するそう wikiより引用。
またはヒメクロマメノキ Vaccinium uliginosum var. alpinum かも。
当年枝の先や葉腋に花が付くクロマメノキに対し、前年枝の先に花が付くのが本種の特徴、と記述されているサイト様もあり。その場での観察を良くしなかったが丈は30センチなかったように記憶している。
また、この写真で見ると古い木質化した枝から花柄が出ているように見えるのでヒメクロマメノキの可能性が高いと思う。
下:変種の白花だろうか? 花も白いし葉色も明るい緑色で、上の個体のように葉縁にも赤味がない。アラスカワイルドフラワー.usのサイトにも Vaccinium uliginosum として同じような白花の写真があった。
下:ハクサンチドリ
Dactylorhiza aristata ダクティロリザ アリスタタ
下:オオバナノエンレイソウ
Trillium camschatcense トリリウム カムスチャッケンス
北海道ガーデン街道でも見たかった花だ。六花亭ではすでに終わっていてガッカリしたが、カムチャッカで出会えて幸運だった。
北海道大学の先生によれば、日高・十勝地方の個体がほかの地域のものとは違って自家不和合性で、昆虫をおびき寄せる必要から、他地域のものより花が大きくなり、昆虫がたくさん来てくれるように大群落となっているとか。
そして、タネは蟻が好む甘いゼリー状物質に包まれているって。
周囲の林が作り出す適切な日照や湿度、受粉を媒介する昆虫をふくめた生態系を維持していかなければ群落は守れない、と言うのが先生のお話の主旨。(北海道大学 大原教授)
カムチャッカでは2-3個の花が一緒に咲いているだけで群落ではなかったが、これが普通のことで、十勝が特異な例なんだね。
下:チシマヒョウタンボク
Lonicera chamissoi ロニケラ カミッソイ
下:チシマノキンバイソウ
Trollius riederianus トロリウス リエデリアヌス
下:ヒメカンスゲ Carex conica みたい??だが詳細不明。
この株は丈が15-20センチくらいでスゲ属の何か Carex sp. とは思う。
とても綺麗で思わずシャッターを切ったが、こういうのってすごく繁茂しすぎるんじゃないかとも思った。だからこの辺ではありふれているとも。
だけど画像検索しても同じものが出てこない。Carex pensylvanica というのが花穂はそっくりだが、根元から花茎が1本出て花穂が1個なのに対して、この写真では節があって各節から花穂が出ているように見える。だいたい、花の構造知らない。どれが雌しべでどれが雄しべよ?図鑑で詳しく調べないと。。。
下:ヤマブキショウマ
Aruncus dioicus var. kamtschaticus
アルンクス ディオイクス カムチャッチクス
葉も大型のショウマなのになぜヤマブキというのか疑問だった。だがよーく葉っぱを見て納得。葉脈が細かくデコボコとしてヤマブキの葉にそっくりだね。
下:ナナカマドですか?
Sorbus commixta ソルブス コミクスタ
ナナカマドは街路樹にもなるほどの落葉高木で、なにより直立すると思っていたけどここでは高さはあまりないね。この木は横に倒れているし幹も細い。冬が厳しいのを想像させる。カムチャッカでは下ばかり見ていて、樹木はあまり良く観察してなかったがガイドさんの説明にもあった通りハンノキとヤナギが多く、ナナカマドはほとんど見なかった。これが本当のナナカマドか良く分からない。
下:エゾノツガザクラ ツツジ科ツガザクラ属
Phyllodoce caerulea フィロドケ カエルレア
上:ハナゴケ/イワゴケ(地衣類)の仲間?
Cladonia sp. カラドニア(ハナゴケ属)の何か
こんな感じでエゾノツガザクラと一緒に生えてた。
【地衣類】ちいるい
菌類と藻類とが共生して一体となっている植物。サルオガセ・ウメノキゴケなど。地衣。(Wikiより引用)
下:クロユリ ユリ科バイモ属
Fritillaria camtschatcensis フリチラリア カムチャッケンシス
クロユリまでお目にかかれるとは思ってなかった。匂いが良くないと聞いたことがあるが、カメラバッグが重く鼻をそばまで近づけられなかった。他の方にも聞いたが皆さん撮影で忙しいの。
下:ワレモコウの仲間ですよね?
下:ヨツバシオガマ?
Pedicularis japonica?
エゾヨツバシオガマ?
Pedicularis chamissonis var. chamissonis?
カムチャッカにあるのはエゾヨツバシオガマらしいが不明。
下:エゾコザクラ
Primula cuneifolia プリムラ クネイフォリア
実生栽培もしたが野生種を見ることができて本当に良かった。花は1センチ強、葉も同じくらいでとても小さいが花茎は長く、周囲の他の植物に負けまいとする勢いがあった。花茎が黒く、その頂点に小花梗が2-3個出て花が咲く。花の濃いピンクが目立っていた。
下:ケヨノミか、クロミノウグイスカグラ (ハスカップ)
Lonicera caerulea subsp. edulis
ロニケラ カエルレア エドゥリス
Lonicera caerulea subsp. edulis var. emphyllocalyx
ロニケラ カエルレア エドゥリス エンフィロカリクス
検索したら、あるサイト様の記述によれば北海道でさえこの二種は混生しているそう。見分け方は結局、新梢に毛が多い(ケヨノミ)か全くない(クロミノウグイスカグラ)かで識別したとも。例によって素人はどっちでもいいんです。生食可ならば。
この写真はヴァチカジェツでの株だが、翌日以降移動途中の林の中でも膝丈ぐらいの株がそこここにあり、よく見るとハスカップ(実)が1株に数個ずつなっていた。最初は採ったらいけないと思っていたが、ガイドのアナトリーさんが食べていいと言ったので、次の機会には20個以上採取して口に含んだ。ビタミンCがいっぱいでしょ。
ところがそのあとがいけない。バスに乗って15分ぐらいしたら胃がキリキリと痛んできた。朝ごはんも少なめだし、他におやつも何も食べてないのになぜ?と思ったら、そうだハスカップだ。たっぷりのビタミンCが空腹の胃に強すぎたみたい。幸い、それ以上のことはなかった。
識別方法と学名については「北海道勇払原野におけるケヨノミとクロミノウグイスカグラの探索・収集」というPDFからの引用です。研究者さまに感謝。だが、亜種名と変種名を続けて列記する学名があると初めて知った。
下:タデの仲間ですか?
下:ヒオウギアヤメ
Iris setosa イリス セトサ
花だけ見るとアヤメの仲間は良く分からないが、花が咲いていない株はたしかにヒオウギ=檜扇だった。葉が扇状なのだ。私の栽培したベラムカンダ(ヒオウギ属) Belamcanda chinensis を思い出した。
ヒオウギは2005年にはDNA解析で Iris domestica に学名が変わったそう。Wikiより引用
そのベラムカンダだったイリス・ドメスティカは千葉でも露地で越冬できず、暖かい地方の植物という印象だった。葉だけの株を見たとき、こんなところにヒオウギがあるわけないので一体何かな?と思っていた。そしたら花の咲いた株があって問題解決した。ヒオウギアヤメは見たことなかったが日本では本州中部以北に分布するそう。
下:ベニバナイチヤクソウ
Pyrola asarifolia subsp. incarnata ピロラ アサリフォリア インカルナタ
下:クルマユリ?
Lilium medeoloides リリウム メデオロイデス
下:カステリソウ
Castilleja pallida カスティレヤ パリダ
下:キバナアツモリソウ
Cypripedium guttatum var. yatabeanum
キプリペディウム グッタツム ヤタベアヌム
大群落で満開だった。
下:ツマトリソウ
Trientalis europaea トリエンタリス エウロパエア
下:シロバナハクサンチドリ
Dactylorhiza aristata f. albiflora
ダクティロリザ アリスタタ アルビフローラ
下:バイケイソウ
Veratrum album subsp. oxysepalum
ベラトルム アルブム オキシセパルム
バイケイソウか、ミヤマバイケイソウか、エゾバイケイソウか不明。
下:チングルマ
Sieversia pentaoetala シーベルシア ペンタオエタラ
下:フトイの仲間? 丈は30センチ位だった。
ここから下はパラツゥンカへ戻る帰路の道路端で停まってもらい、ヤナギラン他の植物の撮影会となる。
ヤナギラン
クルマユリ
ノコギリソウの仲間
アザミの仲間
オクエゾガラガラ Rhinanthus angustifolius
マメ科の何か
ゲウム(ダイコンソウ)の何か
上:ヤナギラン
Chamerion angustifolium Chamerion=ヤナギラン属
カメリオン アングスティフォリウム
アカバナもヤナギランも結実すると細くて長いサヤが上向きにつく。これが別属とはね。だが花の大きさ、花色の濃さで断然ヤナギランのほうが園芸的価値あり。
復刻・拡大版 植物学ラテン語辞典 豊国秀夫編 によれば Chamerionは記載がなくて、Chamaenerionが以下のように出ていた。
Chamaenerion, -i (s.n. II7)ヤナギラン属。 chamai (ギリシャ語で低い)+ nerion (ギリシャ語でキョウチクトウ)。アカバナ科。
syn. Epilobium angustifolium Epilobium=アカバナ属
ヤナギラン(柳蘭、学名:Chamerion angustifolium)は、アカバナ科ヤナギラン属の多年草。アカバナ属に属しているとされることがある。Wikiより引用
下:Galium boreale? ガリウム ボレアレ?
エゾノキヌタソウともカワラマツバともちょっと違う。
ヨツバムグラの仲間らしい。丈は花の頂点で40-50センチくらいだった。
下:私にはどうしてもドデカテオンに見える。だがWikiによればカムチャッカにはないみたい。5ミリから1センチ弱位の花だったと思う。丈も10センチなかったと。。。
葉や茎を撮らなかったのが悔やまれる。
今のところ、唯一花の名前が分からないもの。どなたか教えてくださいませ。
Dodecatheon
サクラソウ科 【属名】ドデカテオン; カタクリモドキ属 shooting star; dodecatheon 10数種があり、北米西北部からアラスカに分布する。多年草。早春にロゼット状に葉をつける。花はシクラメンのように反転した花弁と突き出た雄しべをもつ。花色は紫から桃・濃紅色まである。
上:チシマイチゴ
Rubus arcticus ルブス アルクティクス
上:スミレの仲間
Viola sp. ビオラ(スミレ属)の何か
ピンぼけで良い写真が撮れてなかったのでまったく何か分からない。距の見える画も葉の接写もしてなかった。でもアバチャ山BCにあったのとは明らかに葉が違う。こんな観察写真しかないのも、自分が苦労もせずあまりに間近で見られたのでありふれた植物だろうという思い込みから、画像はネットですぐに見つかるとたかをくくっていた。
下:ミツバオウレン
Coptis trifolia コプティス トリフォリア
自分で撮った写真をよーく見ると、下のほうに三つ葉らしきものが見えたのでミツバオウレンと勝手に思った。
Comments
“カムチャッカ ヴァチカジェツ 湿原” への2件のフィードバック
一杯の山野草 堪能させていただきました。
これだけの種類がみれてすご~I.
まだまだ日本でも私が知らない花が一杯、元気戴きました。
高山植物はあまり見たことがなかったですが、いっぺんにたくさん見られて驚きました。
それに「観察時間は充分取ります」と言われていましたが、やっぱり忙しかったです。私は最後に撮影して、いつもビリで皆さんを追いかける感じでした。
でも、花の散策では、日本では道から外れることが出来ないと思いますが、現地では道なき道をいく感じで植物の傍まで寄れましたし、移動途中で見つけた花のために6輪のダンプ改造車に停まってもらって、観察、撮影会となったり自由度高くてよかったです。
もう二度と行けないかもしれないと思うと、貴重な経験でした。これはまだ1日目です。花の名前を調べるのが大変です。枚数が多いので解像度も落としました。本当はもっときれいです。あーそれから、、、4日間ずっと雨に降られて大変でした、雨女かも。。・゜゜(ノД`)