今日は月が出ている。まん丸で大きい。
黄色っぽいがオレンジがかっている。
大気が汚れているのか。
子どもの頃に見た月は、たしか白っぽい黄色だった。
子どもの時、家の前の雑木林の間から上る月は、
木の間に見え隠れしながら、あっという間に上空に輝いていた。
蒼白い光線は高い空から光の束となって自分に降り注ぎ
小学生の私はしばし見とれて立っていたことを思い出す。
ここ数日は夜風が涼しい。すっかり秋の気配が漂う。
虫の音と秋風に、ほてった肌も癒される。
そろそろ仲秋の名月だが、満月でなくとも月は神秘的で美しい。
ほら、ウサギがお餅を搗いている。
眠れない夜はカーテンを全開し、真っ暗な部屋に月明かりを招く。
東と南の窓、どちらかに冷たい月の明かりを感じながら目を閉じる。
たまに目を開けてみると、月も動いていつのまにか視界から消える。
慌てて伸び上がって月を探す。
あの冷たい、蒼白い光が好きだ。
月光を浴びていると、清澄な心が蘇ってくるような気がする。
いつまでもこの光を浴びていたい。
横たわる私の体に降り注げ。
月の出ているときは、周りの景色がぼぉっと浮かび上がり
影もくっきりと見える。
目を凝らすと昼間のように良く見える。
良く見ようとしなければ何も見えない。
吉本ばななはその著作「キッチン」で、”死ぬときはキッチンで死にたい”と
主人公に言わしめたが、私はどこで死のうか。
花びらを散り敷いたさくらの木の下で死のうか。
こんな月光を浴びながら、静かに息絶えるのもいいな。
もしも選べるのなら。。。。
最後の時は、誰かに手を握っていてもらいたい気もする。
だけど誰にも看取られず、密かに息絶えるのも私らしいんじゃないか。