阿波一国参り その15 焼山寺

阿波一国参り その15 焼山寺

4月21日 第十二番札所 焼山寺(しょうさんじ)

【墨書】
右上: 奉納経
中央: 梵字 虚空蔵
左下: 焼山寺

【ご朱印】
右上: 四國第十二番
中央: 変形印 梵字三字
左下: 虚空蔵院

焼山寺 墨書ご朱印
焼山寺 墨書ご朱印

焼山寺では途中の柳水庵、浄蓮庵、杖杉庵の納経も(無料で)墨書ご朱印してくださるというネットの情報だったが、別料金だと納経所で言われた。私の納経帳は余分なページは数ページしかないし、今回は見送った。

こんな道ばかりなら問題ないが。
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長戸庵(ちょうどあん):標高440m 先が気になってゆっくり納経もしなかった。Sは手持無沙汰で待ってるし、納め札だけ入れた。一回目の巡拝では足りないことばかり。二-三巡しないとやっぱり駄目ね。トイレ有ったらしい。
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こんな素敵な休憩場所もあった。太い丸太やかずらで作られたベンチ。残念ながら休憩しなかった。この日はすでに九州方面から天気が崩れ始めており、午後には雨だけでなく雷も、との予報もあったから午前中に距離を稼ぎたかった。
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やっぱりこんな歩きやすいところしか撮ってない。険しい道はカメラをかまえる余裕はなかった。それでも暗いのでコンパクトデジカメでは手振れが。。。
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柳水庵(りゅうすいあん):標高500m ずいぶん登って下ってと大変だった。が、まだまだ序の口。
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これより以前からへんろころがしがあり、後ろからSが「ビーケアフル」またしばらく行くと「ビーケアフル」と、うるさいことうるさいこと。(-_-;) ま、私がこけたら彼が大変なんだよね。分かるよその気持ち、だが本来私は一人で行くつもりだったから、山道は十分注意して歩いているわよ。こんなふうに私は修行が足りない身なので、まるでナイトのように後ろからついてくるSがそろそろめんどくさくなってきていた。
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この柳水庵のベンチで昼食とした。トイレ有り。雨も落ちてきたが、おにぎり食べて再び頑張る。私はザックカバーをしただけ、Sは半袖Tシャツに短パンの上からビニールポンチョをかぶった。それでも寒い寒いと言っていた。当たり前じゃん、そのかっこじゃ。だからトイレ行ったらすぐに出発。こういうこともペース狂うんだよね、装備違う人と一緒じゃ。

1分ほど降りたところに休憩所があり、そこで天候の様子見している歩き遍路の方が一人。この方とは抜きつ抜かれつ何度もお会いしている。後でまたお会いした時に聞くと、この場所で野宿されたそうだ。本格的に落ちてきた雨と強くなってきた風に私もびびったが、今日のお宿の焼山寺宿坊まで歩くしかないと、レインウェア(上)を着てふたたび出発だ。
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一本杉庵(いっぽんすぎあん)/浄蓮庵(じょうれんあん):標高745m 左右内峠。見事な一本杉でその前のお大師さんの像が小さく見える。が、この像は本当はすごく大きい。3メートルくらいあるかも。
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一本杉庵から焼山寺までの道が本当に険しかった。登山道は岩に数十センチ堆積した腐葉土が雨に削られたような道で、岩肌が露出しているところがほとんどだ。その岩々は雨に濡れてツルツル。これらは阿波石というらしい。青い石(岩)も多く見かけたが、それは阿波青石というらしい。本来なら雨に濡れて青色が冴え、観賞にも値する。何しろ庭石にも良く使われているんだから。ところがそれのお蔭ですごく怖かった。今思い出してもぞっとする。ストックを突いて一気に1-3メートルくらいずつ進んでは一息を繰り返す。

この悪路を短時間で行くことができたのは、Sのおかげだったとあらためて思う。英語通じないが、最後の上りはなんとか弱音を吐かずにSに付いて行った。Sはしきりに大丈夫か?と声をかけてきたが、私は「オーケー」しか言わなかった。言えなかった。他に言葉(英語)を知らないよ。とにかく、Sはお大師様が私に遣わしてくれたナイトだったと思う。

その後、天候は思ったほど悪くならずに済んだ。山の中では風雨も木々のおかげで和らぐ。この石垣が見えたときは本当にほっとした。しかし、ここからもけっこう長い距離を歩かされた。大きな仏様の石像に感嘆しながら、痛い足を引きずるようにしてもう一頑張り。山門への到着は14時だった。私自身の予定していた到着時間より相当早い。納経を済ませチェックインしようとしたが、人がいなくてまた納経所の方へ戻る。事務の方に尋ねると、裏に虚空蔵庵という棟があるという。Sは寒くて我慢できず、さっさとチェックインしていた。
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大きな涅槃像
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山門
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太い杉
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手水の水受けにはコケがもっさり。屋根つきの手水場だから冬も枯れずにいるんだろうか。
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本堂
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ひどい足の状態を撮ろうと思ったが、部屋の中がちょっと写っていたので。宿坊は昔のままで虚空蔵庵という。予約の電話を入れたとき、宿泊を受け付けてくれたが宿坊は公にはやっていませんと前置きがあった。他の宿で仕入れた情報によれば、消防法の関係により改善を求められているらしい。700メートル以上の標高でどうやって取水しているのか。部屋にはスプリンクラーもないといけないのだろう。

20畳くらいある和室で4月末でも炬燵があり、寒かったら石油ストーブ点けてください、と言われた。だが、最近の石油ストーブは使ったことが無く点火方法が分からなかった。そのままにしていたら食事のときに点けてくださった。隣室、廊下との仕切りはふすまのみ。宿泊者が多かったその昔は相部屋だったのだろう。この広い部屋に私一人。女性客はいなかった。隣はS一人。別の二部屋に何人か知らないが2グループ。食事は各部屋に配膳された。
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夜(食後か)になったら、廊下に菓子パンとアンパンが数個ずつ出ていた。1個130円となっていた。私は各1個ずつもらった。翌朝食後に一緒に精算した。翌朝、Sは一人で先に発つが、その時ハグされた。そして彼は涙をながしていた。私はアイウィルミスユーと言った。彼も。そしてやっぱり外人はハグが上手だな~と思った。ふわっときつ過ぎない程度で、感じ良かったわ。私なんか変に力が入っちゃうもんね~。そして、宿の方がパンを2個、お接待ですとSに持たせた。えっ?私は買ったのにぃ?しゃあないな、これも修行よ。

前夜の夕食前、彼はまた次の予約をしてほしくて、どこまで行くかと相談に来た。私は行程の後半は距離を刻んでいたので、彼には距離が短すぎる。もっと進まねばアメリカへの帰国が遅れるばかり。私は夕食も食べずに何軒かの宿へ電話して相談してるうち、あそこの宿からなら早発ちで30キロ歩けると言われたことを伝える。しかし彼は、500メートルほどの山を2つ越えて30キロ以上歩くことに躊躇して悩んでいた。ヒロコ、僕に出来ると思うか?と聞く。私は分からない、と答えたが、同じことを3回も聞かれたらいい加減にしろ、と思ってしまった。彼はだんだん私に甘えてきたのだ。だもんで、つい3回目には、自分で決めろと言い放った。それが多分きつく聞こえたんだろう、それまでぶつぶつ言ってたのに彼は黙ってしまった。こんな時も、どんな言葉がどんなニュアンスで伝わるのか知らずに使ってしまうので、英会話できないことは本当に情けない。

私はすぐにユーキャンドゥイットと付け足した。すると彼は、にやりと笑いながらアイキャンドゥイットと自分に言い聞かせるように何度も唱えた。私は意地悪でじゃなく、自分もいっぱいいっぱいなのだった。自分も明日のルートを確認しなきゃならない。ご飯もさっさと食べないと下げられちゃう。しかし、今思えばもっと優しくしてやらなきゃいけなかった。相手は外国人だ。きっと心細かったと思う。衛門三郎が大師さまと知らずに托鉢を断り、あとで後悔したのと同じような気持ち。

遍路での人との出会いは一期一会。もう絶対会わないだろう人たちだ。相手が望むなら、自分に出来る最大限の事をしてやるべきだった。しかし、自分は人に何も望んではならない。無私だ。私にとって歩き遍路は、自分の欲望を捨てる旅だったのに自分の事が先になってしまった。情けねぇ。