付着散布

いろいろなタネを数年にわたって蒔いてきたが、こんな素人でも観察していると、変な事に気づくことがある。 しかし、研究している専門家の方々はとうにご承知だよ。 本は読むべし! 私が気づいた現象は、春咲きのギリアのタネを6月中旬に蒔いたあと、数日後に粘液がタネから出ていたのに、またしばらくして確認すると、もう粘液は洗い流されたかのように無かった事。 10月になってから発芽したことからも、水分保持のために粘液が出ているんじゃなさそうだ、と素人の私も思った。 タネから粘液が出るその理由は、以下の本に出ていた。

身近な草木の実とタネ ハンドブック 多田多恵子著

この本によればタネから出る粘液は、動物や人に付着してタネを散布させる接着剤としての役目があるそうだ。動物や人間にひっついてタネを散布させる植物は、オナモミとかチカラシバのようなものしか思い浮かばなかったが、粘液を接着剤代わりにして散布する植物があったとはね。まさに文中の章節タイトル通り、動けない植物ゆえの戦略ね。

旅するタネの工夫と戦略

種子は旅立つ–動けない植物の宿命として、種子がそこにとどまれば、水や光や栄養を親子や子同士で争うことになる。親植物から病気や虫も移りやすい。だからこそ、植物はかわいい子に旅をさせる。

  • 種子の役割
    母植物は種子に生命の機密情報を授け、心づくしの弁当(貯蔵物質)を持たせて送り出す。植物によっては種子を実の硬い皮に包んで大事に守る。こうして種子は、親植物には耐えられないような寒さや乾燥を乗り越えて、新しい植物体に育つ。種子が両親から受け継いだ遺伝情報(DNA)は種子ごとに少しずつ異なり、環境変化に適応し、病原菌の突然変異にも対抗して世代をつなぐ。
  • 旅の方法
    動けない植物は、タネを運ばせる相手に狙いを定めると、それぞれに工夫やしかけを凝らす。最後は偶然に身をゆだね、タネたちは旅立つ。

身近な草木の実とタネ ハンドブック 多田多恵子著より