ニートとパソコン

新聞の投稿ページに、「ニートって何?」というコラムが、いま連載されている。一人称の「僕」という登場人物の告白形式だが、インターネットのことが出ていたので、興味深く何回分かのコラムを読んだ。

「僕」は大学を出てから就職したけど、すぐに退職し、その後は自宅で閉じこもりがちになっているそうだ。閉じこもりというと、なんだか暗そうなイメージがあるけど、学生時代に友達がいなかったというわけではなく、普通の学生時代を楽しく送っていた、と書いてあった。だけど就職してもすぐ退職、その後は自宅で親に買ってもらったパソコンを使い、インターネットの毎日となったようだ。

「僕」のインターネットは、掲示板の書き込みが主目的だ。ハンドルネームは固定ハンドルとそうじゃないものを使い分け、ネカマとしての書き込みもしたことがある。ネカマって、ネット上で実際は男なのに、女のふりをすること。そして、書き込みすることが自分の使命となり、「掲示板に書き込んでいるほかの人たちを楽しませてやっている」と思っている。ネットの世界でアイドルとかカリスマとか呼ばれて、大勢力のトップを走っているような感覚を持っていた。

というような文章があった。これらの記事はどこまでが創作で、どこまでが記述者の実体験なのかわからない。あるいは主人公を通して、ニートを分かりやすく説明することを目的としたフィクションかもしれない。私は途中からこの連載コラムを読み出したので分からない。でもネットの世界で、アイドルやカリスマになりたい人については思い当たる人がいる。たいした知識や実績もないのに、ネットで調べたことを掲示板で、まるで自分の研究実績のように書きまくり(本当はネット上でのコピペや図鑑からの引用)、あげくの果て、いかにも専門家ぶった書き込みをしてくる人がいた。おまけにその人は、他人の板のゲストを自分の板に連れ込もうという野心丸出し。そうそう、あのネカマだよー。あまりにこのコラムの記事とシンクロしていたので、どこにもこういう人はいるんだなぁと、改めて思った。正確にはあの男の場合、本人が自分を女だと自己紹介したことはないけど、私たちが女だと勘違いしているのを否定したことが全くない。ということは、女を装って私たちの反応を楽しんでいたんだろうね、きっと。

私が後になってあの男のことを回想したとき、「一体この人は、何を目的にネットの掲示板を徘徊しているのだろうか」と、しみじみ考えたことがある。その男は、自分が自らいろいろな植物を育てたいと思っているわけではなく、他人から注目されるような植物を持ちたがったり、そのための手段をホームページを介していろいろと講じていた。要するに掲示板で話題の中心になりたいのだろうと思えた。「ネット上のアイドルやカリスマ」なんて、目新しい言葉ばかりだけど、端的にいえばこういう風に「自分が中心になりたい」ってことだよね。それを本人は自覚しているのか、自分のしていることがジコチューだって充分に理解しているのか? 理解していない、とはっきり言える。だって、他人の気持ちを考えないんだもの。。。。

ま、他人がインターネットをする目的は、それぞれいろんな目的があってかまわないとは思うけど、こちらが女だと勘違いしていたのを2年もの間否定せず、いかにも女のようなそぶりで返事を書いてきたあの男には腹がたつ。若い女性だと思っていたから、こちらは「おとなの対応をしなきゃ」と、かろうじて対応していたことも多かったが、大の男が書いていると知ったら、多分私はそれほど相手にしなかったろう。またあの男も、自分が男だとみんなが知っていれば、あそこまで調子には乗らなかったと思う。

本題に戻ってニート NEET(Not in Employment, Education or Training) とは、直訳すると「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」ということだそうだけど、ネットでバーチャルな対人関係を築きあげ、その中での自分を思いっきりアピールしていると、実社会に出てゆく気がなくなるのだろうか。傷つくのがイヤ、嫌われるのがイヤ、怒られるのがイヤ、ガマンするのもイヤ、これじゃ社会に出て行けないね。

私は、自分が思っていることは相手も思っている、といつも思う。身近なところで倦怠期の夫婦の場合だと^_^;、、、妻が夫のこんなところが嫌いと思っているとしたら、夫は夫で、妻のこんなところが嫌いと思っているはず。だからお互い様。職場でも学校でもそうでしょ、お互い様。相手の気持ちを思いやること。ガマンすること。己を知ること。職場や学校で嫌なこともあるけど、良いこともたくさんあるよ。社会に出て行かないなら嫌な人に出会うことはないけど、良い人たちとも出会えないよ。